diary-women

インカレ特集〜四年生の想い・吉松真希〜

 

2016年2月15日。私がア女に初めて来た日だ。

ア女に入るや否や、自分にもエンジのユニフォームが配られた。

「よし!私もこれを着て試合に出られるんだ!」

と、一人でニヤニヤしながらユニフォームを眺めていたのを今でも覚えている。

しかし、そのユニフォームに腕を通す日はなかなか来なかった。

公式戦どころか練習試合にも出られないほど私には体力と技術、知識がなかったのだ。

私はみんなのように日の丸を背負ったことも無ければ全国大会出場の経験もない。

新幹線並みに俊足な人。ボールが足に吸いつく人。無限の体力を手に入れている人…。

初めて目にするレベルの高い選手たちに圧倒されていた。

私は1、2年生の時、ゲーム中にパスを受けるのが怖かった。

なぜなら、自分がボールを持つとほぼ100%の確率で相手ボールになるからだ。

試合でも何でもない練習なのに、ボールを持つと緊張しすぎて自分の足元しか見えなくなった。

常に焦ってパスを出すため、パスミスばかりしていた。

そのたびに「ちっ、まさきぃいいっ!ここに出せよ!」「まさきぃい!」「あぁも、まさ…。」

グラウンドにはチームメイトの声が響き渡っていた。その声にまたビクビクして萎縮した。

特に、一個上の先輩Sさんの顔は怖くて見ることもできなかった。(笑)

「もう私の方にボールよ来ないでくれ!!」

そう思っていた。

とにかくみんなの足を引っ張らないように…。ミスをしないように…。

ただそれだけを意識してプレーしていた。

上手くいくことなんて一つもなくて、練習が終わると涙が溢れてくるなんて日常茶飯事。

そして、大好きで始めたはずのサッカーが、気づいたら大っ嫌いになっていた。

日本一のチームでサッカーがしたい!その一心で早稲田に入ったはずなのに、

上手くなってなでしこに入るんだ!そう胸を高鳴らせていたはずなのに、

理想と違って現実はぜんっぜん甘くなかった。

それでも毎日、「絶対に4年になったら自分も全国の舞台に立ってやる!」

そう強い気持ちをもって毎日グラウンドに立った。

心身ズタボロの毎日だったけど、周りに支えられて徐々にア女という環境に、ア女のサッカーに馴染んでいくことができた。

3年になると、自分のしたいプレーも明確になってきて、サッカーを楽しむということを思い出すことができた。

試合に出て、あーでもない。こーでもない。とみんなと言い合うのが楽しくて仕方なかった。

私は腰や膝、足首など怪我が多く、復帰しては怪我、復帰しては怪我の繰り返しだった。

4年目は絶対にけがをしない!と誓っていた。しかし、結局また足首をやってしまった。

安静にしていれば治ると4カ月言われ続けた。

その言葉を信じて、またボールを蹴っている自分の姿を想像しながらリハビリしていた。

しかし、先月足首の手術をすることになった。

一気に目の前が真っ暗になった。

手術が決まってからは悔しさしかなかった。四年生であること以前に、一人のプレーヤーとして、悔しくてたまらなかった。

何のためにサッカーしてきたんだろう。こんなサッカー人生の終わり方でいいのか。

すごく悔しくて、グラウンドでみんながボールを蹴っている姿を見てると帰りたくなった。

でも、私をここまで成長させてくれたのはア女だったということに気づいた今、

私はどんな形であれ、ア女の日本一に貢献したい。

ア女での四年間。苦しかった。悔しかった。楽しかった。

「4年になったら全国の舞台に立って、ピッチの上でア女の日本一に貢献する。」

4年間持ち続けてきたこの目標を叶えることはもうできない。

でも、どんな立場であっても自分にできることは沢山ある。

入部当初の自分なら何もできぬまま終わっていたが、今の私はそうではない。

自分を人として成長させてくれたア女に、関わってくれた全ての方に、そして、こんなに恵まれた環境に飛び込ませてくれて、見守ってくれた大切な家族に、

最後の最後まで全力を尽くすことで、精一杯の恩返しをしたい。

自分にしかできないこと、自分だからできることをやるしかない。

自分を信じて、仲間を信じて、絶対に「頂」を取りに行くんだ。

私はこのメンバーで、必ず最後笑ってサッカー人生を終える。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ピッチを駆け回るチームメイトを横目に
グラウンドの隅で黙々と先の見えないリハビリを続ける。
それは選手にとって最も辛く、苦しい時間だ。
きっと、気持ちが追いつかない事もあっただろう。
楽しそうにボールを蹴る仲間を羨ましく思う事もあっただろう。
それでも彼女の口から出る言葉はいつだって
仲間たちを励まし、笑顔にするものばかりだった。
4年間のはじまりの日、あの時描いた未来とは
違う現実を目の当たりにしているかもしれない。
それでも今の彼女の存在が
仲間たちに前を向かせ、力強く背中を押す
そんなかけがえのない力になっている事に、変わりはない。
彼女の想いを力に変えて、チームは最後の挑戦へと歩み続ける。

阪本